Trouble with Hip Joint

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股関節でお悩みの方

メッセージ

基本的に杖は不要となり、本来の動きを取り戻すための手術。

人工関節の耐用年数は20年以上あり、術後は自転車に買い物へいったり、あきらめていた旅行にいけたりと、生活に大きな改善がみれられます。マラソンなどの走ることは無理としても、人工股関節置換術を受けられた方の約6割が、 手術後にウォーキング、ゲートボール、ダンス、水泳、ゴルフといったスポーツ活動をされているデータもあります。
術後は杖は基本的に不要となります。変形・リウマチで日々お悩みで、鎮痛剤やリハビリ治療でも回復されない状況の方は、人工股関節手術をおすすめしています。

股関節による具体的な初期症状

こんな症状はありませんか?

  • 特に足の付け根に痛みを感じる
  • 足の長さが左右で違う
  • 関節の動きが悪い
  • 歩行時に足を引きずる

初期の症状は、歩き始めや動作の開始時に痛み、歩き出すと痛みがおさまってしまうことが多いようです。
なかには腰や膝に痛みを感じていたが、よく調べると股関節が原因だったということもあります。症状が進むと夜間就寝時に疼きだし、短距離でも歩くことが辛くなってきます。

股関節による代表的な疾患

股関節周辺の代表的な疾患としては、下記の4つの病気が上げられます。初期症状が似ていたとしても、最終的には病状や程度に大きく変化が生まれることもあります。
違和感を感じたら、早めに診療を受けましょう。

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

股関節は大腿骨の丸い骨頭(ボール)が骨盤側の寛骨臼(ソケット)に組み合わさり、両方の骨の端は軟骨とよばれる非常になめらかな組織で覆われており、体重を支えたりなめらかな股関節の動きができるように重要な役割を果たしています。

変形性股関節症は、関節軟骨が変性してすり減りを起こすことにより、関節に炎症反応がひきおこされます。結果、痛みや骨頭・寛骨臼の変形が生じます。股関節の障害をひきおこす病気として頻度が最も高いものが、変形性股関節症です。

変形性股関節症の原因として、寛骨臼形成不全(または臼蓋形成不全)とよばれる骨頭に対する寛骨臼がカバーする範囲が狭いことが考えられます。そのため、体重を支えるために不利な股関節の形状を持たれている方が、ある年齢以降に症状がでてくる割合が高いとみられています。

生じる方の傾向としては、女性に頻度が高く、股関節の痛みが出現するのは40-50歳代が多いとされます。ただし、寛骨臼形成不全の程度が強い方は20歳代以下でも出現することもあります。

関節リウマチ(かんせつリウマチ)

関節リウマチは免疫異常によって体の中の正常組織を傷害する物質(自己抗体)が産生されることによっておこる病気です。全身のあらゆる関節が影響を受けます。 基本的な治療は内科的治療(薬物治療)となってきており、近年生物学的製剤の導入に伴って治療成績が向上しています。しかし、股関節や膝関節など脚の大関節に病気が進行すると、 痛みが出て歩行などの日常生活動作が著しく制限されるようになります。このような方は人工股・膝関節置換手術が有効です。関節リウマチによる痛みを我慢しすぎると骨の変形が進行し、手術がしにくくなる場合もあるため、 手術のタイミングが重要になります。当院では免疫・リウマチ科との連携により多くのリウマチの方の人工関節を行っております。

大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)

大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭の血のながれがとまり、部分的に骨頭の骨細胞が死んでしまう(壊死)病気です。最初は骨頭の形や軟骨は正常に感じるため、痛みもありませんが、壊死した骨がつぶれることによって関節が変形し、痛みや歩行障害が発生します。
患者さまの傾向としては、男性ではアルコール多飲、女性では他の病気の治療(全身性ループスエリテマトーデスなど)でのステロイド使用歴を持たれる方が多いとされますが、現代の医学をもってしても、それらを含め骨頭の血の流れが止まる理由はほとんどが原因不明(特発性)です。
壊死の範囲が小さければ経過観察か骨頭の骨切り術をして壊死のないところで体重を支える手術を行いますが、 骨頭の破壊が進めば人工股関節が必要となってきます。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(だいたいこつかんこつきゅうインピンジメント)

股関節の寛骨臼や大腿骨頭には、余分に骨が張り出している部分があるため、しゃがみこみなどの動作で骨頭と寛骨臼が繰り返し衝突しやすくなり、寛骨臼周囲に付着している関節唇や関節軟骨がいたみ、股関節痛が生じることがあります。その股関節痛が大腿骨寛骨臼インピンジメントです。この場合は、レントゲンやMRI、CTなどの詳しい画像検査で、余分な骨の張り出しや関節唇の断裂の評価が必要です。従来では、股関節痛がありながらレントゲンでのあきらかな異常がなく原因が不明とされた症例も存在し、その中にはFAIや関節唇の断裂が原因と考えられる症例も含まれています。近年、普及しつつある股関節鏡手術によって、関節唇の縫合や骨の張り出しを削る治療がされることが増えてきました。

代表的な股関節部分の治療法

当院では疾患や患者さまのご意見を汲みながら、適切な治療法をご提案・処置します。
低侵襲の手術として、「ナビゲーションシステム手術」を導入し、切開をするとしてもより小さな切開での処置をしております。

人工股関節置換術(THA)

人工股関節置換術は関節障害が進行し、保存療法をおこなっても十分な効果がない場合や、歩行や日常的な動作、仕事や社会活動に支障が強い場合、痛みを取り除き歩く力を取り戻すことにおいて、きわめて有効な治療法となります。

人工股関節全置換術は、簡単に説明しますと股関節の損傷している部分を人工股関節(インプラント)に置き換える手術です。人工股関節は、カップ、骨頭、ステムから生成されます。カップは金属、カップの内側にはめこむインサートは医療用プラスチック(超高分子量ポリエチレン)を用いることが多いです。ステムに関しては骨頭を大腿骨に固定する橋渡しをしており、金属でできています。

手術は全身麻酔でおこない、翌日にはベッドから離床しリハビリテーションをすすめ、おおむね手術後2週間程度で退院となります。

手術を受けるに際しては、発生する頻度はどれも低いですが、念のため理解しておいていただきたい危険性(合併症)に、術後感染(病原菌によって生じる膿み)、脱臼(関節のはずれ)、深部静脈血栓症(下肢の静脈内に発生する血のかたまり(血栓))などが考えられます。
当院では、手術をする際の感染予防策として、手術室は高い清潔度が維持できるクリーンルームを使用し、 術者も宇宙服のような特別な手術着を着用して術者から細菌が入らないようにしています。また、脱臼予防策として、全例でコンピュータナビゲーション手術を用いて、最も脱臼しにくい角度に正確にインプラントを固定します。
深部静脈血栓症予防策として、手術中の弾性包帯着用、手術直後からの間欠的空気圧迫装置による下肢血流の促進、超音波による血栓の有無の確認等安全対策などをおこなっています。

保存療法

保存療法には、生活指導(体重コントロールや杖の使用など)、運動療法(筋力訓練やストレッチング、水中運動など)、温熱療法、薬の服用などがあります。患者さんの全身状況や病気の状態をもとに、最適な保存療法をまずおこなってみることは大切です。ただし、手術をおこなわない保存療法でも必ずしも安全とは言えません。
運動療法にしても、変形性関節症が進行している場合負荷の強い運動はかえって関節症を悪化させたり、薬の使用も胃腸障害や腎臓障害・喘息発作などの副作用をひきおこすことも考えられます。保存療法をおこなっている間も、定期的に病院・医院でレントゲン検査など関節障害の進行性や治療効果がどの程度あるのか、副作用はみられないかなど、経過を観察することや定期的な診察をおこなうことが必要です。

手術後の経過

手術後は杖は基本的に不要となり、自力での歩行が可能です。手術後に、股関節周辺の筋力を回復させるリハビリなども行うことができます。基本的に退院は股関節周辺の筋力が回復してからとなります。ご不安な方は事前に担当医にご相談ください。

術後の運動範囲

退院後は、股関節周囲の筋力が回復していれば、おおむね普通の歩行・動作ができるようになります。腰椎や膝関節の障害の有無にもよりますが、多くの患者さまはしゃがむ、正座などの動作も可能になります。
スポーツ・レクリエーション活動は、一般的にレクリエーションレベルで衝撃のかからないスポーツへの参加が推奨されています。一例にはなりますが、アメリカ股関節学会ではゴルフ、水泳、ウォーキング、ハイキング、ボウリング、エアロバイク、サイクリング、ダブルステニス、軽いエアロビ、社交ダンスなどは推奨されています。一方で、スキー、クロスカントリースキー、スケートは経験者には許可できるとされていますが、激しいエアロビ、野球、バスケット、フットボールは推奨できないとされています。あくまで一例にはなりますので、運動範囲に不安を覚えた際には担当医に相談しましょう。